あらすじ
勇者とは、勇気の種を蒔く者である。
魔王を討ち果たした勇者の背中には、伝説の聖剣ではなく「黒く煤けた片手鍋」が揺れていた。
かつて、身の丈に合わない聖剣を携え、絶望的な危機に陥っていた16歳の新米勇者ルミナ。
彼女を救ったのは、伝説の魔法でも華麗な剣技でもなく、通りすがりの旅人アルトが持つ「泥臭いサバイバル知識」と「不味い野営飯」だった。
圧倒的な質量を持つ魔獣の突進は、森の倒木を利用して自滅させる。
厄介な群れには剣を振るわず、片手鍋を激しく叩く不協和音で三半規管を狂わせて追い払う。
「剣が立派でも、腹が減れば死ぬ。目に見えない明日の生活を護れる奴が、本当に強い奴なんだ」。
師匠の背中から本当の強さを学んだルミナは、魔王討伐という大役を終えた今、名声には目もくれずギルドの端で埃を被った泥臭い依頼を受注していく。
これは、チート能力も魔法も使わず、極限まで研ぎ澄まされた「物理法則」と「旅の知恵」で日常の危機を救っていく、かつての英雄の終わらない旅の記録。