あらすじ
そこは天国。
果てしなく広がる大地には色とりどりの花々が咲き乱れ、押しつけがましさのない、やわらかく甘い香りが風に乗って漂っている。黄金がかった空から降り注ぐ光は暑くも寒くもなく、肌に触れるたびにちょうどよい温度で心身をほどいていく。
ところどころに立つ木々には、手のひらほどの実が鈴なりにぶら下がっていた。口に含めば、かじった瞬間に自分が望んだ味や触感に変わるのだ。しゃくりと林檎になり、ふわりとケーキになり、がぶりと高級ステーキ、とろりとプリンに。どれほど食べても腹が苦しくなることはなく、かといって物足りなさを感じることもない。不思議とすべてがちょうどよかった。
泉には下界の様子が映し出されており、人々は芝生に寝そべってそれを懐かしげに眺めている。穏やかな気候とゆるやかに流れる時間に身を委ね、天国の住人たちはのんびりと暮らしていた。――が。