あらすじ

自信があったわけではないが、自分の生き方はこれでいいと思っていた。でも、それらは全て、どうやら一般的に見ると間違っていたようだった。 渡 栄清(わたり えいせい)四十六歳。 離婚という形で大事にしていたはずの家族を失い、母親の介護に一人あたっていた彼だったが、つい数日前その母親が他界したことで、自分には何もないことに気付かされ、強い孤独感を味わった。 栄清は、傷心のままどこへでもいいからと外へ出る。 逃避だ。何もないという事から目を背けるための。 栄清は、近くの港から出る小型船に乗り、ある小さな小島へと渡った。 そこはかつて、多くの人が住んでいたであろう痕跡だけが残るたった十九名しか住んでいない島だった。 なぜ、この島を選んだのかは分からない。だが、栄清はこの島で様々な体験をすることになる。 「夜には、森の中の大楠には近寄らん方がええよ」 住民たちは皆口をそろえてそう言う。 「夜にはな……みんな、帰ってくるけん」 それが当たり前のように、人々は言う。その意味は、すぐに理解出来た。 夜になると島一帯の地面が明るく光り、蛍のように光の粒が浮き上がる。そして、その一つ一つが死者の魂であることを栄清は知る。 『俺は、藤原平助と申す。そなたは、この島の人間ではないな?』 夕方近く、森に入って老人たちの言う大楠に近づいた栄清は、大楠の主となった平助と出会い、「夜に帰ってくる者たち」と出会う。 彼らや現住民たちとの交流をし、悩みを解決していく内に、栄清は自分に欠けていたもの知り、空っぽだった心を少しずつ満たしていく……。 『栄清。おぬし、ここに来る前より良い顔になった』 やがて、平助はそういって笑った。 大楠に取り込まれた元武士、平助と人生に疲れた栄清のオムニバス物語。 悩みが一つ解かれるたびに、島には花が咲き誇る……。

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小説を読もう2026/05/26
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