あらすじ
放課後の屋上で、ちょっとだけ強い風に吹かれた――そう思ったのが最後の記憶。
次に目を覚ましたとき、女子高生・冬野ひかりは、見知らぬ広場の真ん中で、首を斬り落とすためのギロチン台に縛りつけられていた。
「悪女クラリス・ヴェルディアナ。罪状は王太子妃殺害未遂、毒の使用、貧民への暴行。 ――最期に、何か言い残すことは?」
執行官の声に、ひかりは目を白黒させながら、震える唇でたった一言だけ呟いた。
「あの……私、何もしてないんですけど……?」
その瞬間。広場の空気が、凍りついた。
王太子の手は止まり、隣に立つ侯爵令嬢の顔は青ざめ、騎士団長が一歩前に踏み出す。
――どうやら、彼女が入ってしまった身体の持ち主「悪役令嬢クラリス」は、本当はもう、この世界のどこにもいなかったらしい。
「君は、本当に……クラリスなのか?」
冷たい目をした第二王子の問いに、ひかりは正直に答える。だって、嘘のつき方なんて知らないから。
これは、貴族社会のルールも、令嬢としての振る舞いも、自分にかけられた冤罪のからくりも、何ひとつ知らない女子高生が、ただ「本当のこと」を喋っただけで、滅びかけた人生をひっくり返していく――そんな、ちょっと不器用で、痛くて、それでも温かい、異世界やり直し物語。