あらすじ
「日本一の金持ちになりたい」――
明治三十八年の夜。
関門海峡を臨む田野浦の浜で、二十歳の越智三郎は夜空に向かってつぶやいた。
愛媛県桜井に生まれた、貧しい農家の三男坊である。
古びた椀船・大龍丸に漆器を積んで九州へと渡ってきたばかりだった。
大富豪への出世を目指す三郎は、天秤棒ひとつで始めた行商から、やがて博多へと乗り込む。
九州随一の商都で三郎が思いついたのは、月給取りに毎月払いで品物を売る『月賦』という新しい商法だった。
さらに三郎は漆器のみならず、陶磁器、呉服、さらに瀬戸内の特産品を仕入れて取り扱い、展覧会方式の出張販売、新聞広告と、次々に新しい手を打っていく――
これは激動の明治時代を駆け抜け成り上がった、若き伊予商人の物語。