あらすじ
思い込みは
いつも静かに
目の裏へ棲みつく
あの人は冷たい、と
一度決めれば
優しさは
視界の端で透明になる
好きだと思えば
欠点でさえ
「味わい深い」に変わる
人は
世界を見ているようで
ほんとうは
自分の信じたい形を
なぞっているだけなのかもしれない
雨の日に
「今日は最悪だ」と言えば
濡れた靴だけが記憶に残り
「草木が喜んでいる」と言えば
土の匂いが
胸の奥まで届く
認知バイアスとは
脳の怠慢ではなく
心が傷つかないための
古い毛布なのだろう
けれど時々
その毛布をめくって
裸の風に触れなければ
誰かを誤解したまま
自分自身さえ
見失ってしまうから
だから今日も
決めつける前に
ひと呼吸
世界は
思ったより
ずっと広く
人は
思ったより
やさしいのかもしれない