あらすじ
生命の価値が女神から授かる「光度」で決まる世界。
最高位の聖王家に生まれながら光を持たない「失敗作」の少女・エルマは、それでも家族から深い愛情を注がれ、幸せな日々を送っていた。
しかし15歳の特別な儀式の日、彼女は真実を知る。
家族の愛も、仲間の優しさも、すべては偽り。エルマの真の役割は、妹を「完全な光の器」に造り上げるためのデータを取るべく、数万回におよぶ四肢切断と臓器摘出に耐えさせるための『無限に再生可能な人体実験のモルモット』だった。
温かい日常の記憶は、実験の苦痛で発狂し、供物としての品質が落ちないように施されていた「精神の麻酔」に過ぎなかったのだ。
真実の記憶を解放され、愛する家族から嘲笑われながら廃棄孔(奈落)の底へと蹴り落とされたエルマは、絶望の中でおぞましい泥の化け物へと成り果てていく。
人間としての自我が消えゆく寸前――彼女は暗闇の底で、一人の盲目の少女・シエルに出会う。
「こんなにも暖かくて、大きくて、優しい光。貴女は……私を迎えに来てくれた、天使様ですね?」
光を失い、温もりでしか世界を認識できないその少女は、醜い異形の肉塊となったエルマを『天使』だと全肯定し、微笑みかけた。
自分をオモチャにして壊した狂った世界になんて、もう未練はない。
エルマは手に入れた規格外な力を器用に駆使して、シエルのためにふかふかのベッドを作り、美味しい魔物肉のスープを煮込み、この奈落の底で気ままに平穏に暮らすことを決意する。
一方その頃、やがて地上では奈落に「世界を滅ぼす規格外の魔王」が誕生したと噂が広がり、エルマを捨てた元家族やエリート騎士たちが次々と討伐(邪魔)へとやってくるのだが……。
「シエルとの平穏な日常を壊す奴らは、全員ただの『お肉』だよ」
――これは、一人の少女が平穏な日常を手に入れるために、地獄の底で理不尽な暴力を振るう、気ままで温かい反逆の記録である。