あらすじ
「ルナ、悪い魔王じゃないもん……。ねえ、お兄さん……ルナのこと、めちゃくちゃにするつもり?」
異世界へ転生し、人類に滅ぼされる運命の魔王になってしまった元トップ配信者のルナ。
正面衝突したら一撃で消滅する絶体絶命の危機を前に、彼女は腹を括った。
発動したのは、前世で数多の男たちを骨抜きにしてきた、プロのあざとセクシー営業だ。
計算し尽くされた上目遣いと意図的にずらしたドレスから覗く鎖骨で、最強の男を転がし、専属のボディーガードに仕立て上げる計画だった。
対する、人類最強の聖騎士長クロード。
彼は鉄のポーカーフェイスを崩さないが、その正体は、前世でルナに全財産を捧げていた筆頭熱狂信者だった。
彼が死に物狂いで人類の頂点まで上り詰めたのは、世界の命令に従うためではない。
転生時に女神から強制された「魔王を討伐せよ」という理不尽な神託から、最愛の存在を合法的に保護するためだった。
ゼロ距離で推しの営業を被弾した男の脳内は、一瞬で未曾有の大爆発を起こす。
(尊さが許容量を超えている。予定通り、ここで人類を捨てる)
クロードは一切の躊躇なく身内の副団長を裏拳で吹っ飛ばし、己の白銀の盾を踏み砕いてその場に跪いた。
「人類終了のお知らせ。俺、今日で聖騎士を辞めて魔王軍に移籍します」
最強の護衛を手懐けたとドヤ顔をする魔王と、ルナのために女神の神託へ逆らうつもりの最強オタク。
ルナが生き残るために仕掛けるファンサに対し、クロードの愛と有能さは常に限界突破していく。
「ルナ様が『助かる』と言いかけた。お礼に人間界の中央商会を裏から経済破綻させて資源を貢ごう」
「ルナ様の安眠を妨げる不届きな羽虫は、極大魔術の衝撃波で衣服ごと粉砕して永久に出入り禁止だ」
愛が重すぎる最強のオタクのせいで、自分のファンサ一発ごとに人間界の利権や軍勢がものすごいスピードでスクラップになっていく。
ルナは予測不能な暴走を続ける男をどうにか手のひらの上で制御しようと、さらなる微笑みやおねだりで軌道修正を試みては空回る、涙ぐましい悪戦闘を繰り広げる。
外側はどこまでも気高く美しい王道ファンタジー。
中身はやってることが完全に限界オタクと元配信者。
(待って。この狂気的な全肯定と最高の椅子、まさかこの男、前世の私の『筆頭熱狂信者』じゃないの……!?)