あらすじ
地下の冷え切った霊安室で、男は二十四歳で自死を選んだ息子の遺体と対面していた。
始まりは、息子の高校最後の冬。
妻の身勝手な不倫による家庭の崩壊だった。
大学進学の資金も元妻に奪われ、泥をすするような絶望の中から、息子は自力で這い上がり、二十四歳の若さで出世と最愛の婚約者との結婚を掴み取った。
ようやく、幸せになれるはずだった。
あの、両家顔合わせの日までは。
祝福の席に突如乱入してきた、かつて自分たちを捨てた元妻。
そして、それを見た婚約者の母親が、青ざめた顔で絶叫する。
「私の前の家庭を壊した女……」
巡り巡って引き寄せられた、最悪の因縁。
そして男のスマートフォンに届いた、実母からの呑気な連絡。
『お祝いに駆けつけるって言ってたから、場所を教えてあげたのよ』
悪意など、誰にもなかった。
誰もがただ、無自覚な「善意」と「甘さ」に従っただけだった。
なぜ、正しく生きようとした息子は死ななければならなかったのか。
父親の後悔と、一生消えない呪いを描いた現代ヒューマンドラマ。
※物語の性質上、劇中に激しい嘔吐および自死に関する描写が含まれます。あらかじめご留意ください