あらすじ
祖母が渡れなかった夏の約束を、孫の私たちがもう一度渡る。
篠原夏帆、十七歳。
松山市で暮らす高校二年生の夏帆は、夏休み、祖母の家の片付けと夏祭りの手伝いのため、幼い頃に住んでいた愛媛県八幡浜へ戻ることになる。
海沿いを走る鈍行列車。
潮の匂い。
港のカラスみたいに聞こえた、八幡浜の「が」の方言。
懐かしいはずなのに、どこか少し遠くなっていた町。
そんな八幡浜の港で、夏帆は東京から来た少年・朝倉湊と出会う。
湊が探していたのは、亡き祖父が残した一枚の古い写真に写る場所だった。
写真に写っていたのは、白い灯台と、夏の海。
そして、若い頃の夏帆の祖母によく似た少女。
写真の裏には、こう書かれていた。
「潮が引く夜、灯台の下で待つ」
その言葉に導かれるように、夏帆と湊は、宇和海に浮かぶ小さな島・汐待島へ渡る。
白灯台、潮が引いた夜にだけ現れる約束の浜、届かなかった手紙。
少しずつ明らかになるのは、十七歳だった祖母と、湊の祖父が交わした、果たされなかった夏の約束だった。
海が出会わせ、海が離した想い。
言えなかった言葉を抱えたまま止まっていた、祖母たちの夏。
その記憶をたどるうちに、夏帆と湊自身の夏も、静かに動き始める。
瀬戸内の島で、祖母が渡れなかった約束をもう一度渡る、ひと夏の青春恋愛物語。