あらすじ
夜、とある橋の上。一人の男が欄干を乗り越え、じっと川を見下ろしていた。
闇に塗りつぶされた川面は底知れぬ黒を湛え、吸い寄せるような引力を持っている。風の音も、木々の葉擦れの音も今の男にはひどく遠い。耳に残るのは低く流れる水の音だけだった。
男は大きく息を吐いた。
膝は小刻みに震え、脇にはじっとりと嫌な汗が滲んでいる。喉はからからに乾き、唾を飲み込むだけでもひりつくように痛んだ。だが、それでも不思議と心の奥には、奇妙な安堵があった。
これで終わる。ようやく終われる――。
男は唾を飲み込み、足先に力を込めた。今まさに一歩を踏み出そうとした――その瞬間だった。
「っう!?」