あらすじ
「過酸化水素水の分解実験中に死ぬなんて、我ながら化学者冥利に尽きる」
高校二年生・桐島凛は、放課後の実験室で事故死した。元素周期表をそらで言える自称・化学オタク。享年十七歳。後悔は化学のレポートを出し忘れたことだけ。
転生先は、魔法が支配する王国ファルメイア——の、王宮最底辺部署「第七錬金実験室」の雑用係。格式もなく、人も来ず、上の部署の失敗実験の後始末をする、誰も見向きもしない場所。
でも凛は、転生初日に気づいてしまった。
——この世界の「魔法」、ぜんぶ化学で説明できる。
炎の魔法は酸化反応の加速。水の魔法は水分子の引力操作。人を癒す魔法は体内酵素の活性化——全て、高校化学と物理の範囲内だ。「魔力」とは活性化エネルギーを制御する力であり、「魔法」は単なる化学的・物理的操作に過ぎない。なぜ誰も気づかないのか不思議でならない。
そんな凛のもとに、ある日、事件が舞い込む。
王宮の上級魔法師たちが次々と「魔法の暴走」で倒れているのだ。原因不明、手がかりなし——だが凛には見えた。これは事故ではない。意図的に設計された、化学的な罠だと。
「私が解く。前世の知識を全部使って、必ず解いてみせる」
孤高の王宮首席魔法師・アルノルト=フォン=ライゼンとの衝突、王宮に潜む陰謀、そして魔法の真実——理系女子の転生ミステリー、開幕。