あらすじ
化学反応式を見ているのが世界で一番楽しい、化学部所属の女子高生・朝霧理子(あさぎり りこ)、十七歳。地味で、無愛想で、友達より試験管のほうが多い。そんな彼女が文化祭の準備中、調合をミスって爆発に巻き込まれ――気がつけば、剣と魔法と神託に支配された王国「グランディア」の、王宮の中庭に転がっていた。
この世界には「化学」という概念が存在しない。あらゆる不可思議な現象は、神の祝福か、悪魔の呪いと呼ばれている。 銀の食器が黒くなれば「毒の呪い」。井戸に近づいた者が倒れれば「精霊の怒り」。雷が落ちて木が燃えれば「神罰」。
そこに迷い込んだ理子の目には、ぜんぶただの化学反応にしか見えない。
ひょんなことから、宴の席で起きた「王太子毒殺未遂事件」を、ただの硫化反応だと見抜いてしまった理子。退屈を持て余していた絶世の美形王太子・アルセイスは、彼女の異常な知識に目をつけ、ぐいぐいと距離を詰めてくる。
「面白い。きみ、私の"解呪官"になりなさい」 「お断りします。私は早く日本に帰って、青チャートの続きを解きたいんです」
――目立ちたくない。関わりたくない。けれど、放っておけば人が死ぬ。 理科年表より分厚い陰謀と、教科書には載っていない恋の予感。 呪いを解体する元素記号の物語、ここに開講。