あらすじ
『壁から二つ目の席』
雨の日。
喫茶店《Amber》には、
誰も座らない”壁から二つ目の席”がある。
そこにはいつも、古びたテディベアが座っていた。
――誰かの代わりに。ずっと。
「生憎、満席だ」
無愛想なマスターに告げられた若者は、
テディベアを静かに壁側に置いて、言った。
「ほら、席がひとつ空いた」
店内の空気が、一瞬止まった。
常連客たちは、息を呑んだ。
マスターだけが、その席の意味を知っていたわけじゃない。
――知らなかったのは、若者だけだった。
「お前、そこに座る意味、分かってるのか」
圧をかけても、若者は首を傾げた。
そして古びたテディベアを抱えて、言った。
「あの、これ、洗っていいですか」
マスターが気づいた時には、
青年はずぶ濡れで、風呂を借りて、居座っていた。
止まっていた時間が、
騒がしく、温かく、動き始める。
不器用な男と、真っ直ぐすぎる若者の、
雨の日から始まる話。
※表紙絵はAI生成になります。