あらすじ
雨の日の駐車場で、生後九か月の子猫「ゴマチン」は、一人暮らしの女性・千尋に拾われる。
母猫のうにを失ったばかりのゴマチンは、孤独な匂いをまとった千尋のそばで暮らし始める。
千尋は疲れた会社員だった。誰とも深く繋がれず、画面越しの会話だけを繰り返し、簡単な食事で日々をやり過ごしている。そんな彼女を、ゴマチンはただ足元で温め続けた。
だがゴマチンには、不思議な力があった。
“悲しいこと”が起きる前になると、白い尻尾が落ち着きなく揺ぎ、空気の重さを感じ取るのだ。
ある雨の日の前夜。
千尋が出張用のキャリーケースを出した瞬間、ゴマチンはかつてない不穏な気配を察知する。必死に止めようとするが、千尋は「二日で帰るから」と笑って家を出ていった。
しかし千尋は戻らなかった。
代わりに部屋を訪れたのは、千尋に似た匂いを持つ女性・沙織だった。ゴマチンは沙織に引き取られ、新しい暮らしを始める。それでも千尋の不在は消えず、ゴマチンはずっと“帰ってこない足音”を待ち続けていた。
そんなある雨の日。
再び白い尻尾が揺れる。導かれるように向かった公園で、ゴマチンは捨てられた幼い子猫を見つける。そして年長の野良猫から、“にゃんこにゃんこネットワーク(NNN)”への誘いを受ける。
千尋を探したい――。
その想いを胸に、ゴマチンは沙織のもとを離れ、雨の街へ走り出す。
これは、孤独な人間を温め続けた一匹の猫が、“帰る場所”を探し続ける物語。