あらすじ
創業70年。数え切れないほどの幸せを見守ってきた老舗結婚式場「クラシック・マナー」は、耐震工事の猶予切れにより、今月末での閉館と解体が決まっていた。
50代のオーナーは、不本意ながらも共に泥水をすすってきた従業員たちへ、一人ずつ解雇を通告していく。
頑固な老コック、スマホばかりいじっているアルバイトの現代っ子、融通の効かない堅物の主任、そして無口な掃除婦。
『君たちには、感謝と謝罪しかない――』
自らの不甲斐なさに項垂れ、非難を覚悟するオーナーだったが、彼らから返ってくるのは予想外の言葉と、この不便で古びた洋館への密かな愛着ばかりだった。
歩くと文句を言う階段、煤だらけのバーベキューグリル、そして埃の舞う斜光。
失われていく空間を舞台に、不器用な大人たちが織りなす、静かで温かい最後の一ヶ月間の群像劇。