あらすじ

深川の八幡宮で宮司見習いを務める九条と、幼き日の神輿蔵火災のトラウマから、天才的な将棋の才能を心に封印してしまった美少女・菊。孤立無援の二人のもとに、向島の豪商・巴屋徳兵衛から、黄金五百両を賭けた盤上勝負の招待状が届く。
​嵐の吹き荒れる隅田川を渡り、巴屋の豪華絢爛たる下屋敷「漣翠荘」へと足を踏み入れた二人を待ち受けていたのは、金と欲の泥に塗れた、尋常ならざる訳ありの男女たちだった。
極貧に喘ぐ武士夫婦、博打で身を持ち崩した彫金師と元花魁、借財に追われる浪人とその可憐な許嫁。九条を除いた彼らは全員、あの忌まわしい火災の夜の記憶を共有する、同じ寺子屋の幼馴染たちであった。さらにその座には、男女の業をねっとりとした視線で見つめ、画帳に炭を走らせる謎の天才絵師・東洲斎写楽の姿もあった。
​屋敷の客室にはすべて、内側から下ろせば外からは決して開けられぬ頑丈な「閂(かんぬき)」が備え付けられていた。巴屋はそれを「誰にも邪魔されぬ完璧な密室」と呼んで不敵に笑う。
だがその夜、地を震わせる雷鳴とともに、狂気の連続密室殺人の幕が上がる。
日本刀で自らの腹を召した淒惨な男の骸。そして、その男の目の前で、この世のものとは思えぬ秘薬と道具によって陵辱し尽くされ、絶頂の果てに吊るされた女の骸。
​外から施錠できるはずのない密室で、なぜ彼らは死んだのか。
天井裏の狭い隙間に身を潜め、血生臭い地獄の嬌声と肉体の交わりを五感で知ってしまった九条と菊は、恐怖のなかで底なしの背徳的快楽へと突き動かされていく。謎深き巴屋の真の狙いとは、そして写楽が隠し持つ妖艶な秘密とは何か。盤上の駒のように狂わされていく人間たちの、血と淫靡に染まった歴史時代小説。

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アルファポリス
アルファポリス2026/05/24
  • 現在の作品新説・江戸将棋無残絵巻