あらすじ

人の名前を呼ぶのが苦手な少年がいた。呼ぶことは踏み込むことだと、どこかで信じていたから。 四月の朝、桜の木の下で出会った転校生——日向栞は、誰にでも優しく、いつも笑っていた。でもその笑顔の奥に、ほんの少しだけ遠い目をする瞬間があることに、瀬川湊大だけが気づいていた。 少しずつ近づくたびに、何かが遠ざかっていく気がした。彼女が抱えている秘密の重さを知るにつれて、湊大は「守りたい」という気持ちと「確かめることへの恐怖」のあいだで揺れ続けた。 春が終わる頃、湊大は初めて、震えながら彼女の名前を呼ぶ。 「しおり」 その一言は告白でもなく、別れでもなく——彼女がこの世界にいることを確かめる、たった一つの言葉だった。

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カクヨム
カクヨム2026/05/24
  • 現在の作品春の終わりに、君の名前を呼ぶ