あらすじ
時計の針は、午後十五時。
門司港駅から少し息を切らせて坂を登った、清滝の高台にある私の部屋。
ベランダの窓を開けると、狭い関門海峡の向こう、手を伸ばせば届きそうなほど近くに対岸の下関が見える。
――今日のその距離は、どこか気の遠くなるほど遠い。
数時間前、大切な「彼女」がこの部屋を出て行ってしまった。
部屋に残された、使い古されたヘアピン。冷蔵庫の中の、消えない生活の匂い。
一人きりになった静けさに耐えかねて、私はホームセンターの板で自作した、少し歪な木製の本棚の前に立つ。
彼女がいない、これからの十日間。
私は一日に一冊ずつ、私の人生を支えてくれた特等席の本を抜き、彼女との記憶を愛おしむように綴ることにした。
町田その子、江國香織、小川糸、角田光代、青山美智子……。
紡がれる十人の作家の言葉と、門司港の美しい夕暮れ。
本を愛するすべての人に贈る、等身大のライフスタイル・文学エッセイ。
十日目の朝、関門海峡を渡った先で私を待っている、優しすぎる結末とは――。
(※本作は10日間の毎日投稿・短期集中連載です。ぜひあなたの「思い出の一冊」もコメント欄で教えてください)