あらすじ

藤原宗春は、兼好法師の草に憧れ、随筆を書き始めた。 花、月、老い、死、無常。 それらしいものを書けば、いつか自分も兼好のようになれると思っていた。 だが、宗春の筆は、どうしても美しいものへ向かわなかった。 葬送の場で形見を数える指。 説法中に菓子へ流れる僧の目。 品を重んじる者の腹の音。 死を前にしても気になってしまう、見舞いの僧の鼻毛。 上品にはなれなかった。 けれど、そこにも確かに人間がいた。 やがて宗春は「放屁庵俗丸」と号し、己の俗を受け入れる。 その草は人々に密かに読まれ、笑われ、隠され、けれど誰にも正面から褒められることはなかった。 そして時は流れ、明暦の大火。 江戸の古書肆に残っていた一冊の写本『俗丸草』も、火に呑まれていく。 これは、兼好にはなれなかった男と、残らなかった随筆の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/05/24
  • 現在の作品【時代小説】残らなかった徒然草―『俗丸草』異聞―