あらすじ
十八歳になる前夜。
上京してから二年間、私は誰にも馴染めなかった。
強烈ないじめを受けたわけではない。ただ、誰かの輪に入ろうとすると見えない壁に阻まれ、気付けばクラスのどこにも自分の居場所が存在しなかっただけだ。
一人は平気だった。
だが“独り”は違った。
世界に味方がいない感覚。
赤信号、踏切、窓の外の海。日常の至るところに私は死の匂いを感じるようになっていた。
死にたいわけではない。
ただ、この苦痛から逃れたいだけだった。
しかし、その苦痛が何なのか、自分でも分からない。
そして十八歳の誕生日を迎える夜。
眠れずに起き上がった私の身体は、なぜか小学生の頃の姿になっていた。
目の前に広がっていたのは、もう離れたはずの実家。
そこで私は、高校入学前に死んだはずの愛猫・クロと再会する。
夢だと思った。
そう思いたかった。
だが、その世界には何かがおかしかった。
見覚えのある状況の違和感、思い出は歪み、忘れたはずの記憶が少しずつ姿を現し始める。
そして現れる異形の存在。
それらは人間を襲う怪物ではなかった。
幼い頃の孤独。
見捨てられる恐怖。
他人への諦め。
自分自身への嫌悪。
消したはずの感情が、形を得たものだった。
主人公はクロに導かれながら、自らの記憶の世界を旅していく。
学校。
公園。
踏切。
海辺。
古びた教室。
そこで待ち受けるのは、過去に置き去りにしてきた「自分」たち。
倒すたびに思い出す。
忘れたかったことを。
目を逸らしたかったことを。
そして旅の終わりに主人公は知る。
自分が本当に恐れていたものは、死ではなかった。