あらすじ
「君がいなくても、家は回る」——婚約破棄を告げた彼に、わたくしは五年間抱え続けた帳簿の束を、両手で恭しくお返ししました。
放蕩の当主、浪費する嫡男。とうに潰れていたはずのラングフォード侯爵家を、地味な婚約者のわたくしが、化粧した数字と頭を下げる日々で、ひとり支えてまいりました。
でも、もうよろしいのですね。
脅すつもりはございません。告発するつもりも。わたくしはただ、お預かりしていたものを、正当な持ち主にお返しするだけ。——それが、不正にならぬように。
わたくしが手を離した日から、止めていた歯車が、ひとつずつ動き出します。