あらすじ
「球根彼女」。それは直径15センチほどの、両手にすっぽり収まる、血のように真っ赤な球根から育つ、人型の植物だ。
土の中で発芽し、一年ほどかけて成人女性のサイズまで成長する。十分な栄養を与えれば、土から分離し「収穫」できる。
「球根彼女」は高度な知性と自我を有し、自律的に行動できる。
本物の人間の女性のように、いや、本物の人間の女性以上に誠実に、唯一の伴侶であるあなただけを、心から慕ってくれる。
「理想の彼女が欲しい」
切実な欲望と孤独、未来への不安が、男を地獄へと誘い込む。
「萌芽ファーム」の被験者となった稲垣洋高は、土に埋めた球根から「さつき」という美女を育成し始める。優秀なトレーナー・本田伊織に導かれ、稲垣は彼女の育成に没頭していく。しかし、ある時から彼女を育てるために要求される対価。
世界を持続させるためには、生贄が必要だ。
次第に正気が薄れていく中、稲垣は意味深な夢を繰り返し見るようになる。故郷の海と、黒い鏡。
これは、理想の女性を育てる物語ではない。
一人の男が、愛という名の檻の中で、少しずつ、しかし確実に、心身を絡め取られていく記録。
逃げ場のない管理と支配。その末に稲垣が選んだ答えとは。