あらすじ
【第15回角川つばさ文庫小説賞 応募作】
「両親の無関心も怒鳴り声も、不在さえも。それを愛だと思えば、愛になる」
育児放棄(ネグレクト)気味の家庭で育った三浦ひよりは、「かわいそうな子」にならないため、完璧な「明るくて良い子」を演じてきた。
地元の商業高校を卒業し、都内で営業事務員として働くようになった十九歳のひより。
ようやく自分の力で生きていけると思っていた彼女の日常は、ある夜、突然の襲撃によって奪われる。
病室で目覚めたひよりが鏡で見たのは、十九歳の自分ではなく、同じ夜に何者かに襲われた三十四歳の社交ダンス講師・志水澄子の身体だった。
混乱するひよりの前に現れたのは、昏睡状態の身体から魂だけが抜け出したプロダンサー・間宮隼斗。
隼斗が確かめに行くと、ひよりの自宅からは「ひより自身の身体」と、大切な家族であるペットのちびまるが跡形もなく消えていた。
さらに、ひよりの職場には「本人から、親戚の不幸で二週間休むと連絡があった」という。
では、今この瞬間、ひよりの身体を動かしているのは誰なのか。
そして、ちびまるはどこへ消えたのか。
「私はもう、大切なものを誰にも奪わせない」
ひよりは澄子の姿のまま、隼斗とともに職場へ潜入し、怪しい同僚たちの謎を追い始める。
けれど隼斗には、本体から離れていられる時間に限りがあった。
リミットは、およそ二十四時間。
自分の身体。
消えたちびまる。
知らない誰かの手で、形を変えられようとしている人生。
ひよりは隼斗とともに、消えた「ちびまる」と自分たちの人生を取り戻すための命がけの戦いを始める。
同じ夜にふたりの人生は奪われた。 命は——迷いながら正解に辿り着く。