あらすじ
「君なら、分かってくれる」
夫はいつも、そう言った。
その一言を、私は四年余り、信じ続けてきた。
侯爵夫人エマ。
病弱な義妹のため、茶会の隣席を譲り、観劇の約束は三度延ばされた。
夫の優しさを疑う理由はないと、自分に言い聞かせて。
ある夜、書斎の文箱の底で、私は三通の書状を見つけてしまう。
神殿から、私宛て。
四年余りの間、誰にも開かれぬまま、私を待っていた書状だった。
封蝋には、銀の月の紋章があった。
私が嫁いだ朝から、誰にも気づかれぬ場所で、何かが守られていた。
そして、私が屋敷を去った翌朝から、その何かは静かに崩れ始める。
四年余り、私が本当に支えていたものは、何だったのか。