あらすじ
勇者パーティを追放された補給係兼値付け士ノア・レインズ。
剣も振れず、魔法もろくに使えない彼の能力は、物の適正価格や損失、買い叩かれ度が見える【損益眼】だった。
仲間を守るために危険な装備や無理な遠征を止め続けたノアだったが、勇者アレスには「金の話ばかりで仲間を信用していない」と見なされ、遠征前に追放されてしまう。
行き場を失ったノアが王都の市場で見たのは、婚約破棄され「悪女」と呼ばれる令嬢クラリス・エルネスタの領地産羊毛布が、銀貨七枚の価値があるにもかかわらず、銀貨二枚で買い叩かれようとしている場面だった。
「この布は、半値で売るものではありません」
だが問題は、布の品質ではなかった。
悪評で失われた信用。
説明を省いてしまった領主代行。
誇りを傷つけられた職人たち。
そして、自分自身の価値まで安く見てしまったクラリス。
これは、売れない商品を安売りする話ではない。
買い叩かれた布と、職人と、領地と、悪女と呼ばれた令嬢が、もう一度、自分たちの価値を取り戻す話。
「価値を下げるな。売り方を変えろ」
追放された値付け士は、悪役令嬢の領地をもう安く見せない。