あらすじ
(※全3話の短期連載です。すでに完結しております)
一九九四年、三月。
海へと続く長い坂道。
卒業式を終えた飯森由佳は、幼馴染の中山智司と並んで歩いていた。
一週間の失踪から何事もなかったように戻ってきた智司。
彼は小さな頃から心の周りに高い壁を築き、誰にもその痛みに触れさせない人だった。
彼と同じ高校に通いたくて、奇跡のような猛勉強をして隣に並んだ由佳。けれど、その見えないガラスの壁を前に由佳の想いは届かないまま、寂しさを埋めてくれる別の優しさに、身も心も委ねてしまっていた――。
「じゃあ、またね。飯森さん」
遠ざかるバス、ついに名前で呼ばれることのなかった切ない恋。
戻らない過去と、それぞれに別の明日へと歩き出す、残酷で、けれどどこまでも美しい現実。
鈍くきらめく太平洋を背景に、引き裂かれそうな若者たちの焦燥と一瞬のきらめきを描く、ほろ苦いボーイミーツガール。