あらすじ
【あらすじ】
昭和六十年、深夜のオフィス。
バブル前夜の日本で、怒鳴られても折れず、断られても食らいつき、数字を取り続けた営業マン・中村正義は、誰にも看取られることなく、静かに死んだ。
気づけば、別の世界に生まれていた。
魔法が存在し、人間族・エルフ族・ドワーフ族・魔族が共存する中世の世界。しかし人間族は非力で魔法も使えぬ最底辺の種族。その中でもクロウドはさらに最底辺だった。
顔に刻まれた暗い痣——「悪魔憑きの烙印」。
それだけで、仕事は断られ、道は空けられ、目を逸らされる。
まともな職には就けず、親に捨てられ、孤児院でも透明な存在として十年を生きた。
魔法も使えない。剣の腕も並。身分も地位も、何もない。
しかし、クロウドにはひとつだけ、この世界では誰も持っていないものがあった。
前世で磨き抜いた「間(ま)」の感覚。
人の息の吸い方、目の動き、体の重心——それだけで相手の本音を読み取り、場を掌握する力。無理難題をひっくり返す交渉術。どんな逆境でも笑って立ち向かう胆力。
灰色の街・アッシュタウンの裏通りから、元営業マンの魂を持つ少年が動き出す。
烙印? 関係ない。
魔法がない? 必要ない。
最底辺? ここから始めりゃいい。
これは、見た目でも身分でも魔法の力でもなく——結果だけで世界をひっくり返す男の物語。