あらすじ
口座残高が底をつく夜、二十三歳の佐藤瑛太のスマートフォンに一通のDMが届いた。
「仕事内容は清掃。日給五万円」
白金台の高級マンションで待っていたのは、銀縁眼鏡の男・佐伯。彼が命じたのは、部屋の汚れを落とすことではなかった。そこに住んでいた人間が「存在した」という痕跡を、この世界から完全に消し去ること。
処方箋、日記、診察券。誰かの一年が、誰かの約束が、溶解液の中に沈んでいく。
三軒目の現場。清掃リストの中に、瑛太は見覚えのある名前を見つける。
佐藤 善造。
十年前、借金だけ残して消えた男——自分の父親の名前が、次の「消去対象」として記されていた。
父を憎んでいた。ずっと憎んでいた。それでも、消されるのは違う。
元看護師の相棒・九条真希とともに、瑛太は組織の核心へと動き出す。戸籍、政治、建設、医療——巨大な利権構造の「清掃業者」として機能してきた組織の闇を暴くために。
憎しみは、救いたいという気持ちとは違う。しかしこの感情の塊は、消えることを拒否していた。