あらすじ
海沿いの地方都市で暮らす主人公と有紀は、幼い頃からいつも一緒だった。
帰り道の坂道。
夕暮れの踏切。
雨上がりの川沿い。
有紀は古いカメラで何でもない景色を撮り続けていた。「なくなるから」と笑いながら。
主人公はそんな彼女の隣にいる時間を、当たり前だと思っていた。
けれど高校2年の夏、有紀は東京の美大へ進学することを決める。
離れてしまえば終わる気がした。
それでも主人公は、好きだからこそ引き止められなかった。一方の有紀は、本当は“必要だ”と言ってほしかった。
互いを大切に想っていたはずなのに、二人の優しさは少しだけ噛み合わなかった。
やがて季節は流れ、連絡は途絶えていく。
数年後。
社会人になった主人公は、書店で一冊の写真集を見つける。
タイトルは、『still』。
そこに写っていたのは、かつて二人で過ごした街の景色だった。
空。坂道。踏切。
そして、どこにも写っていないはずの“誰か”。
写真集の最後に残された一文を読んだ時、主人公は初めて知る。
有紀が街を離れた本当の理由。
そして、自分たちが失ったもの。
「好きだった」のその先にある、
時間と景色の恋の物語。