あらすじ

第1話 結愛とおかえり魔法 北海道から帰ってきた次の日。 結愛は、まだ少しだけ“魔法の余韻”をまとったまま、リビングのソファに沈んでいた。 「……魔力、使いすぎたかも……」 そうつぶやいて、ひまりちゃんにもらった雪うさぎをぎゅっと抱きしめる。 ふわふわしているのに、どこかひんやりしていて、それが逆に現実っぽかった。 外の世界は、ずっと賑やかだった。 雪まつり、ステージ、人の声、笑顔。 でも今は。 この家の静けさが、やけに大きく感じる。 そのとき。 キッチンから、ぐつぐつと小さな音がした。 シチューの匂いが、ふわっと広がる。 いつもの家の匂い。 結愛は、ゆっくりと瞬きをした。 ——ああ、帰ってきたんだ。 その感覚が、胸の奥に静かに落ちていく。 --- 「結愛、おつかれさま」 ママの声は、特別なことを言っているわけじゃないのに、なぜか心にしみた。 その一言で、結愛の中にあった“外で頑張っていた力”が、少しずつほどけていく。 パパは新聞をめくりながら、いつもの調子で言った。 「おかえり」 それだけ。 それだけなのに。 結愛は、小さく笑った。 「ただいま!」 その声は、さっきまでよりずっと軽かった。 --- その日の夜ごはんは、シチューと焼きたてのパンだった。 「ほっかいどうね!!」 「ゆきね!!」 「ひまりちゃんね!!」 結愛は止まらない。 ひまりちゃんはむっとしているけど、どこか楽しそうでもある。 優月は呆れながらも笑っていた。 その空気を、ママとパパは静かに見ている。 ——いつもの家。 でも今日は、少しだけ違って見えた。 --- ふと、結愛の声が止まった。 スプーンを持ったまま、少しだけ下を向く。 「……でもね」 みんなが自然と結愛を見る。 結愛は、少し照れながら続けた。 「“ただいま”っていうの、好き」 リビングが、一瞬だけ静かになる。 「なんかね……」 結愛は言葉を探すみたいに、少し間をあけて。 「ひとりじゃないって、思えるから」 その言葉に、ママはふっと笑った。 パパは小さくうなずく。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/05/23
  • 現在の作品結愛とおかえり魔法