あらすじ
――世界は、とっくに壊れていた。
都市【ルヴォロ】で娼館の用心棒として生きる少年・アルクは、盲目の妹リィナと共に、辛うじて日々を繋いでいた。汚れ仕事を引き受け、暴力を振るい、他人の欲望と悪意を真正面から受け止めながら、それでも妹だけは守り抜く――それがアルクの生きる理由だった。
それだけが、彼にとっての世界だった。
リィナもまた、そんな兄を誰より信じていた。
狭い離れの部屋で交わす他愛ない会話。僅かな金で買った食事。見えないはずの空を、いつか一緒に見たいと笑った日々。
二人は華麗で醜悪な花街でそれなりの幸福を享受しながら暮らしていた。
だが、ある日。その日常は唐突に終わる。
アルクがかつて追い払った人物が、逆恨みでリィナを襲った。
理不尽な暴力によって、リィナは命を落とす。
守れなかった。間に合わなかった。届かなかった。
そしてアルク自身もまた、何者かの手によって罪人へと仕立て上げられ、巨大な箱へ押し込められたまま、“奈落”へと落とされた。
奈落――正しくは【ガラクタシティ】。
重く灰黒の空に覆われ、汚染された大地と瓦礫が延々と続く、世界の底の街。人も、モノも、命すらも捨てられる場所。
食料も、水も、居場所もない奈落で、アルクは生き延びるために全てを喰らった。
木を食らい、革を食らい、鉄を食らう。
それは、生きるための行為だった。
死にたかったはずの少年が、それでもなお、生き延びてしまうための行為だった。
壊れた街で、壊れかけた少年は、それでも生きる。
これは奈落の底で始まる、生存のためだけの物語。