あらすじ

春先の風はまだ少し冷たくて、それが逆に気持ちよかった。 王都から北へ三日。街道を外れて森に入り、さらに半日ほど歩いたところで、少年はようやく立ち止まった。 「……うん。この辺だな」 腰までしかない背丈に不釣り合いな大きな荷袋を背負った少年――千歳樹一郎は、木々の隙間から差し込む光を見上げて満足そうにうなずいた。 年の頃は十二歳。 くせのある黒髪はあちこち跳ねていて、着ている外套は枝に引っかけたのか裾が少し破れている。見た目だけなら、森で迷った町の子供にしか見えない。 だが彼は、この国に正式に任命された調査官だった。 アルヴェンス王国東方辺境調査局所属調査官。 もっとも、その肩書きを知っている本人ですら、いまはどうでもよさそうだった。―――――――――――

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小説を読もう2026/05/23
  • 現在の作品水の樹、炎の樹 ~王国公認の調査官、マイペースすぎて上司を困らせる~