あらすじ
AIの会社でデータ設計をしていた香月静は、祖母の死をきっかけに東京を離れ、故郷の久留米へ戻った。
祖母の遺品の中に、一冊のノートがあった。何十年分もの観察記録。人間の体温、湿度、〇・一ミリ単位のズレ。祖母は数値ではなく、指先で人間を読んでいた。
ノートの最後に、一枚のメモが挟まっていた。「読んだら、一度だけ工場に行きなさい」
訪れた下着工場には、四十年以上縫い続ける職人たちがいた。彼女たちの言語は数値ではなく、「生地の機嫌」だった。
そこにJAXAからの依頼が届く——長期宇宙滞在用の肌着を作ってほしい、と。
宇宙飛行士の皮膚に、ここで縫った布が届く日まで。