あらすじ
メレン王国の公爵令嬢オーレリア・フォン・クラウゼンベルクは、王太子アルベルトの婚約者として七年間、王太子妃教育を受け、王家のために務めを果たしてきた。
しかし春の薔薇夜会で、アルベルトは男爵令嬢ミリアを連れ、衆人環視の中で婚約破棄を宣言する。
「私は真実の愛を選ぶ」
誰もがオーレリアが泣き崩れると思った。
だが彼女は静かに一礼し、こう告げた。
「承知しました。では、殿下の発言を正式な意思表示として記録いたします」
貴族の婚約は、恋愛ごっこではない。
王家と公爵家の誓約であり、教育、婚資、名誉、外交信用を伴う正式な契約である。
王太子側近ヨハンは、婚約破棄を「双方合意の解消」にすり替えようとする。
王家は沈黙を求め、社交界はオーレリアを冷たい女として噂する。
けれど、彼女は泣かない。
怒りを叫ばない。
ただ、記録を集める。
そんな彼女を見ていたのは、パルマティア帝国皇弟アレクサンデル・フォン・ゲルンテンシュテルン。
「殿下の恋愛に帝国は関与しません。ですが、殿下の誓約の重さには関心があります」
これは、婚約破棄された公爵令嬢が泣き寝入りせず、契約と記録で王太子側の有責を明らかにし、自分の名で立てる場所へ向かう物語。