あらすじ
辺境の古い修道院で、元騎士のアレン・フォートは身寄りのない子供たちの面倒を見ていた。
剣は二流。魔法も半端。説教は下手で、飯はよく焦がす。
それでも子供たちは、なぜか彼を「先生」と呼んだ。
アレンが教えられたのは、立派な剣技でも魔法でもない。
怖い時の逃げ道。腹が減った時の飯の作り方。転んでも止まらず走ること。
ある夜、修道院が孤児狩りに襲われる。
アレンは子供たちを地下道へ逃がし、自分だけが扉の向こうに残った。
そして、先生は死んだことになった。
残されたのは、血の跡と折れた木剣だけ。
子供たちは泣きながら生き延び、それぞれの場所で十五年を過ごした。
泣き虫だった少女は、歴代最年少の大聖女に。
不器用だった少年は、王国最年少の騎士団長に。
数ばかり数えていた少年は、魔術院の異端の天才に。
パンを盗んでいた少女は、王都最大級の商会主に。
無口だった少年は、裏街の情報網を握る影に。
誰もが先生の死を受け入れたふりをした。
けれど、誰も本当には忘れられなかった。
十五年後。
古代魔法の眠りから目覚めたアレンは、大きな孤児院に変わった修道院で、自分の慰霊碑を見る。
いや、待て。
俺、死んだことになってるのか。
これは、失敗作だと思っている先生が、若き英雄になった教え子たちの止まった時間を、もう一度動かしていく物語。