あらすじ
雨の降らない「八月の国」の王子である俺は、雨と六月の国が大嫌いだった。
じめじめした空気。曇った空。
そんな国から、療養のため一人の姫がやって来る。
“紫陽花姫”――そう呼ばれる彼女は、雨によく似合う美しい姫だった。
けれど彼女は、雨の中で咳をする。
晴れの日は日陰ばかりを歩き、降りもしない空へ手を伸ばす。
しかも、雨を浴びすぎると身体を壊してしまうらしい。
「……意味が分からない姫だ」
最初はそう思っていた。
だが、雨を嫌う俺と、雨から離れられない彼女は、少しずつ互いを知っていく。
これは、乾いた国の王子と、“雨の国の紫陽花姫”が紡ぐ、静かな恋物語。