あらすじ

「ねえディアドラ、悪いんだけど、また5万ほど貸してもらえないかな?」  我がバンフィールド家の中庭の東屋で、婚約者のエリオット様と二人でお茶を飲んでいると、不意にエリオット様がそんなことを言ってきた。 「またですか。先週も5万貸したばかりですよね?」 「ごめん! 今度こそ絶対に返すから! 週末に競馬の大きいレースがあるんだよ! これで当たれば、今まで借りてた分も耳を揃えて返すからさ! ね! 頼むよディアドラ! 君だけが頼りなんだ!」  エリオット様は手を合わせながら、祈るように何度も私に頭を下げる。 「しょうがないですね。ではまた例によって、こちらの契約書にサインをいただけますか」  私は手元のバッグから一枚の紙とペンを取り出し、エリオット様に差し出す。 「はいはい、君も相変わらずマメだよね」 「ちゃんと読んでからサインしてくださいね?」 「ああ、わかってるって」  だがエリオット様は鼻歌交じりに、ろくに文字も読まず、ササッとサインを済ませた。 「はい、これでいいだろ?」 「ええ、確かに。では――」  私は財布から1万サクル札を5枚取り出し、エリオット様に差し出す。 「へへ、悪いね。必ず返すからさ!」  エリオット様はお金を素早く懐に仕舞う。 「ええ、よろしくお願いしますね」  だが、結局いつまで経っても、エリオット様が私にお金を返してくれることはなかった。  それどころか、この後も事あるごとにエリオット様は私にお金を無心してきたのだ――。

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カクヨム
カクヨム2026/05/23
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