あらすじ
外縁に生まれた未接続者ヘルヴィ・ラウハは、困窮から逃れるため、都市トゥオネラの『単身養育支援プログラム』に身を委ねる。
接続者となる代償は、生まれた子を五歳で都市へ差し出すこと。娘ネルトゥリは、土や水や風に耳を澄ませる、不思議な感受性を持つ子だった。
やがてヘルヴィは、支援という名の回収が娘に迫っていることを知り、母ヨールカのもとへ逃げる。しかし、娘を守りたいという愛は、恐怖と所有の衝動に絡め取られ、取り返しのつかない破局へ向かっていく。
母の腕、白い灯、転落、そして失われる名前。
後に「アガティ」と呼ばれる少女の深層に刻まれた“白い放物線”は、都市が移植した外縁空爆の記憶ではなく、母と娘のあいだに起きた、あまりにも痛ましい原外傷だった。
これは、愛が救いになりきれなかった母と、記憶を作り変える都市と、名前を奪われてもなお自分を保とうとする少女の物語。