あらすじ
【あらすじ】
「凛ちゃんって、冷めてるよね。もったいない」
図書館の司書として働く綾瀬凛(28)は、世間に溢れる「恋愛至上主義」のきらびやかな景色の真ん中で、いつも一人だけ色を失ったモノクロームの世界にいた。
他者に性的に惹かれることがない――『アセクシャル』。
自分の性質に名前を見つけてもなお、普通の枠からはじき出された孤独の檻の中で、凛は息を潜めるように生きていた。過去の「断れなかった夜」の傷を抱えたまま。
そんなある日、凛は同僚の藤代夏海が流した、悲痛な涙を目撃する。
明るく完璧に見えた夏海もまた、世間の「普通の幸せ」に応えようとして、自分を木っ端微塵に壊してしまった過去を持っていた。
グラデーションは違えど、同じ痛みを抱える二人。
「私の前では、もう無理して笑わなくていいよ」
冬の雨の坂道、一本の傘の下。
性的関係を持たず、身体を重ねなくても、ただ手を繋ぎ、体温を分け合う。
世間が用意した既存の箱(ラベル)を拒み、二人だけの優しい避難所を築いていく、静かで切実な救済の物語。
“触れられることが怖かった。
それでも、誰かの隣にいたかった。”