あらすじ
『まだなかにいる』は、孤独を見抜く男・九条玲司と、不可解な変死事件を追う刑事・真壁恒一を軸に描かれる心理サスペンスである。
玲司は幼少期、家庭内暴力の絶えない家で育った。怒鳴り声と破壊音が響く夜、彼は押し入れに隠れて耐えていた。そんなある夜、玲司は暗闇の中で“自分を見つけた何か”を感じる。重要だったのは、それが本当に存在したかではない。「誰かが自分を見つけてくれた」という感覚だった。
成長した玲司は児童心理士となり、孤独を抱えた人間に寄り添う“理想的な支援者”として振る舞う。しかし彼は、人が「理解された」と感じる瞬間に強く執着していた。玲司にとって支援とは救済ではなく、孤独の収集だった。
一方、刑事・真壁は、橋の下で発見されたホームレスの不審死を追う。遺体は異様に整えられ、顔には安堵にも似た表情が残されていた。さらに、防犯カメラに映る不自然な人影や、「後ろに誰かいる気がする」という感覚が関係者たちの間で広がっていく。
捜査の先で真壁は玲司に辿り着く。しかし玲司は証拠を残さず、人々から深く信頼されていた。
この作品は怪異そのものを描くのではなく、「見つけられたい」という人間の欲求と、孤独が人をどう変えていくかを描いた物語である。