あらすじ
55歳の広岡悟は、地元で“何者かになったつもり”のまま生きてきた男だった。小中高と同じ仲間とつるみ続け、飲み会と博打を繰り返し、恋愛や挑戦の機会は「もっと上を狙える」という見栄で何度も逃してきた。会社では出世もできず、気づけば年下の部下に頭を下げる立場。仲間たちもまた、結婚や成功、あるいは逮捕や借金といった形で人生が分岐し、広岡だけが“変わらないまま残った”。
余命宣告を受けた夜、雨の街をさまよった彼は「人生の交差点」と書かれたバーに辿り着く。そこには年齢不詳のマスターがいて、広岡に「どこからやり直しますか」と問いかける。人生で後悔を抱えた者だけが入れるその場所で、広岡は中学・高校・20歳・30歳の4つの時代へ戻る機会を得る。
過去に戻った広岡は、今度こそ変わろうとする。しかし環境は同じでも、自分の中にある“見栄”“依存”“逃げ癖”は簡単には消えない。地元仲間との関係、届いたはずの恋愛、選べたはずの進路。そのたびに小さな選択を誤り、少しずつ結果が変わっていく。
やがて彼は気づく。人生を決めていたのは大きな奇跡ではなく、飲み会を断ることや一歩踏み出すことといった、小さな選択の積み重ねだったと。最後のループで広岡は完璧にはなれないまま、それでも逃げない生き方を選ぶ。
現実に戻った彼は病室で最期を迎える。しかしそこに残っていたのは、成功者ではないが、誰かと共に生き、何かを選び続けた男としての静かな満足だった。再び現れるバーで、マスターはただ一言「悪くない人生でしたね」と告げる。