あらすじ
五十路の老人が、年若い青年に頭を下げた。
「弟子にしてくれ」と。
タルヴァス・イノーには、諦めきれない夢があった。
若い頃「魔術の才能がない」と切り捨てられた、たった一つの夢。
痩せた領地を継ぎ、何十年もかけて領民が食えるだけの土地に育てた。「土食いのイノー」と嘲られ、「枯れ木のタルヴァス」と容姿まで笑われ、それでも黙々と耕した。妻を看取り、家督を譲り、重荷から解放されたとき、老人に残されていたのはあの夢だけだった。
だから旅に出た。
そして出会う。
詠唱を笑い、無詠唱で魔術を放ち、何事もなかったように去ろうとする青年に。
群衆が呼ぶ蔑称は「魔獣食いのガルド」。
黒髪、褐色の肌、首には魔獣の骨。社会から忌み嫌われ続けた、孤独な天才。
枯れ木が、獣に頭を下げた。
この出会いが千年の常識を揺るがすことを、まだ二人とも知らない。
これは、嘲られた者たちが世界の魔術を変えていく物語である。