あらすじ

舞台は、あらゆる個人情報がデジタルで一元管理された現代の東京。 都心の古社にある四畳半の離れには、朧月夜(おぼろづき よる)のペンネームで活動する怪奇小説作家・蓮次(れんじ)が暮らしている。彼の正体は、江戸時代から生き続ける不老不死の吸血鬼(始祖)である。 かつては街の闇に潜む異形を狩る「化け物退治」を神主の大吾から請け負い、十分な報酬を得ていたが、高度経済成長による都市開発と街灯の普及に伴い、怪異どもは人知れず都会の死角へと隠れていった。仕事(食い扶持)を失った蓮次は小説執筆で生計を立てようとするも、昨今のWeb小説における異世界転生ブームに押され、現在は打ち切り寸前の深刻な金欠状態にある。彼は長年、タール17ミリの煙草「ハイライト」を吸うことで、脳の吸血衝動(万能感への依存バグ)をニコチンへの渇望だと錯覚させて自制し、現代社会に溶け込んでいた。 ある深夜、大吾を通じて警察庁の裏組織から、全身の血を完全に抜かれたミイラ遺体の写真が持ち込まれる。最新の防犯カメラ網や巡回ルートを完璧に回避したその犯行手口から、蓮次は知性を持った元眷属「雹一郎(ひょういちろう)」が現代のテクノロジーを利用して動き出したことを察知する。 時を同じくして、朧月夜の打ち切りを阻止すべく、深夜の電子街外れにあるファミレスへと急いでいた新人編集者・真壁椎名(まかべ しいな)は、路地裏のコインパーキングで警察の動向をハッキングしながら無差別に人間を襲う「黒いワークウェアの男たち(鬼人)」の現場に遭遇し、拉致されてしまう。 首筋を噛まれ、心停止寸前の窮地に陥った椎名。 大吾が調べた電波ログを頼りにアジトへ踏み込んだ蓮次と、脳の情報を共有する従者の黒ポメ「大福」は、彼女を救うため、自身の血を与えて「眷属化」させる。 本作は、時代の変化に取り残された孤高の始祖と、怪力と異常な大食漢のスペックを得てしまった新人編集者が、現代のシステムを利用して肥大化する新しい闇(雹一郎の陰謀)へと立ち向かう、夜の東京の裏側を描いた物語である。

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小説を読もう2026/05/22
  • 現在の作品朧月夜の新人編集者