あらすじ
十九世紀美術史の迷宮と呼ばれる三枚の連作。なぜ最後の一枚、画家は彼女の顔を奪ったのか?
芸術の都ウィーン、ドナウ運河をまたぐ賑やかな橋の上。似顔絵で生計を立てる無名の画家ルートヴィヒは、突如現れた好奇心旺盛な男爵令嬢エルイーゼに「わたしの肖像画を描いて!」と詰め寄られる。
ルートヴィヒが紡ぎ出す宝石のような色彩に魅了されたエルイーゼと、そんな彼女のありのままの魂の輝きをキャンバスに写し取っていく彼。二人は退屈な世界に反逆する共犯者のような絆を育み、やがてルートヴィヒの描いた革新的な絵画は、保守的な社交界にこれまでにない鮮やかな風を吹き込んでいく。
いつしか彼にとってエルイーゼは唯一無二のミューズとなり、二人の心は分かちがたく結ばれていくが、そこへ身分という超えられない壁が立ちはだかり……。
“おれの一生唯一のミューズへ。” ドナウの風が運んだ眩しすぎる出逢い。キャンバスの額縁を飛び出し、本当の愛と自由を求める二人のヒストリカル・ロマンス。