あらすじ
夫の隣には、いつも義妹が座っていた。
私はヴァルトハイム侯爵家の若夫人。年に四度の茶会を主宰し、家計も贈答も招待状の宛名も、私の机の上で整えてきた。
「彼女は家族同然なんだ」
「君なら分かってくれるだろう」
夫はそう言って、当主の隣を妹に譲り、私の名のとなりに妹の名を並ばせた。
私は怒らない。怒鳴らない。
ただ、春の招待状に並んだ二つの名前を見て、初めて、その言葉の重さに気づいただけだ。
義母様だけが、私を見ていた。
机の引き出しの帳面に、四つの空白の欄を空けて。
そして、書斎に届く紺色の封蝋。
公務には使われない色で、私の名だけに宛てられた、誰かの便り。
春、夏、秋。私は微笑んで、席を譲り続けてきた。
冬の茶会の朝、私は何を選ぶのだろう。
茶器の下に挟む一通の書状で、家の何が、変わるのだろうか。