あらすじ
死者は、神の元へ送られる。
善か悪か。
赦されるか、罰せられるか。
それを決めるのが、“審判の神”だった。
神は百歳になると、一人につき一つの審判の部屋を与えられる。
もっとも、神界での百歳など、人間で言えばたった十歳程度の子供に過ぎない。
数万冊の本。
神殿の使いである黒い二又猫。
そして、静まり返った審判の部屋。
そしてある一室にいたのは、
齢百歳の幼い少女の女神だった。
彼女は常日頃、退屈していた。
部屋に訪れるのは、欲に溺れ、恨みを買い、誰かに殺された人間ばかり。
泣き叫ぶ者も、命乞いをする者も、もう見飽きていた。
そんなある日。
一人の皇后が、血に濡れた姿で現れる。
「暗殺されたのです。犯人は……」
震える声でそう告げた彼女は、最後にこう女神に尋ねた。
「息子は……あの子は、生きていますか?」
だが女神は冷酷に答えた。
「そのような者は知らぬ。お前の子など見ておらぬ。」と。
彼女は目を閉じ一呼吸置いてから
ゆっくりと微笑み、「良かった...。」と死後の世界へ消えていった。
だが、数日後。
事実とは残酷だ。
審判の部屋に現れたのは、まだ幼い次期皇帝だった。
毒矢に射抜かれ、自分が死んだことすら理解していない少年。
無邪気に笑うその姿に、女神は初めて“情”を知る。
審判の日までのわずかな時間。
女神は少年と遊び、笑い、心を通わせた。
そして。
審判の結果は明白だった。
少年に与えられた結末は"死"だった。
女神は耐えられず、己の指先を噛みちぎり、血液を使い禁忌を犯す。
本来なら許されない蘇生の力を使い、少年を人間界へ戻したのだ。
秘密を知る記憶ごと。
消すべき記憶を、消し忘れたまま。
大神は激怒した。
「お前は神の理を破った」
罰として女神に下されたのは、“生涯折檻”。
神としての立場を奪われ、人間界へ追放される刑だった。
人間として。
たった十歳の少女として。
何も知らない下界...人間界への追放。
それでも女神は、どこか安堵していた。
もう一度、あの少年に会えるかもしれないと...
そして、下界へ追放された女神
生き長らえた少年
没落貴族として怯えながら過ごす少女
おのれの保身の為に生きる皇后候補
欲と地位へ縋った女........
人間界で、新たな幕が上がる。
女神として生まれた彼女が、
“運命という掟”に背いた、その瞬間から。