あらすじ
一九五一年、一月。大浪(おおなみ)陸軍飛行場。戦勝国となったはずの歪んだ昭和を駆けるリンゼイと士郎の前に、一柱のクールな邪神・蓮田大尉(ハスター)が現れる。彼の導きで秘密特務部隊に組み込まれた二人だったが、東亰(とうけい)の地下要塞で待ち受けていたのは、這い寄る混沌「赤の女王(ナイアードラトホテプ)」による完璧なる敗北だった。アトラの糸は引きちぎられ、鉄人731号は大破。リンゼイは脊髄から『結晶体』を剥ぎ取られて「残り半年の命」を宣告され、士郎は頭の傷ですべての記憶(美学)を失ってしまう。邪神の衝撃波で空間が裂け、二人が叩き落とされたのは――原爆が投下され、そこから復興を遂げたという、別次元の一九九九年二月、大阪・日本橋(にっぽんばし)。「君は、ぼくの旦那さんさ」力を失ったリンゼイのついた優しい嘘を、記憶のない士郎は真っ直ぐに信じた。古びた『五階屋百貨店』の片隅。気のいい骨董屋の阿倍野のおっちゃんに拾われた二人は、貧しくも愛おしい「偽りの夫婦」としての日常を紡ぎ始める。士郎は真っ黒な手で古いオーディオを修理し、リンゼイを養うために働き。五階屋の隅にあった千円の中古ウェディングドレスを贈り、靭公園(うつぼこうえん)で世界一ささやかで最高の結婚式を挙げる。「こんな最期も悪くない」――リンゼイが静かに死を覚醒した、その時。五月の影から、人の姿(黒スーツの紳士)をした邪神が、彼らの大切な隣人たちをじわじわと、陰湿に壊しにやってくる。そして予言された破滅の月、七月。すべてを奪われ、引き裂かれた士郎の怒りが、大破したはずの『鉄人の付喪神』と共に、【完全なる無言】となって大爆発する!オカルト怪異×重厚ミリタリーが時空を超える、新章『時空跳躍編』、ここに開幕!