あらすじ
新品に気後れし、中古に安らぎを見出す男景司は、「中流」ではなく「中庸」を信条に生きていた。中古の家具に囲まれた穏やかな日常の中、彼は新品の電気ケトルや半額のソファと出会い、少しずつ価値観の幅を広げていく。やがて商店街の処分セールで出会った女性・美咲との関係もまた、情熱でも断絶でもない「ほどほどの距離」に落ち着く。別れを経て再会した彼女は、値札のない古道具屋を営んでいた。そこでは物の価値も関係の意味も、互いの感覚で決まる。景司は気づく、人生とは選び取るものの総和ではなく、「ちょうどよさ」を受け入れ続ける過程なのだと。劇的な出来事のない日々の中で、彼は静かに、自分なりの充足へと辿り着いていく。