あらすじ
大正から昭和へ移りゆく時代、土木作業員として働く景司は、日々土を掘り、道を作る暮らしを続けていた。妻・道子と慎ましくも温かな生活を送りながら、彼はただ「同じ日々」を積み重ねていく。しかし、現場での崩落の危険や仲間との支え合い、そしてやがて授かる命を通して、景司は少しずつ自らの仕事の意味に気づいていく。道はただの土ではなく、人と人、場所と時間をつなぐものだった。完成しても名は残らず、やがて風雨にさらされて形を変える。それでも、自分の手で作った道が誰かの歩みを支える、その事実が、彼の人生に静かな誇りを与える。終わりと始まりを繰り返しながら、景司は己の道を歩み続ける。名もなき者の、確かな生の物語である。